佼成出版社音楽出版室

KOSEIレーベルについて

世界に類例を見ないウィンド・ミュージックのマスター・アーカイヴ!

KOSEIレーベルは、吹奏楽、ブラスバンド、管・打楽器アンサンブル、器楽ソロに特徴づけられるウィンド・ミュージックに特化した全世界的にも類例を見ないマスター・アーカイヴだ。 1979年の初リリース以降、ポジティブに、かつ体系的に送り出されたコンテンツは、質・量ともに他の追従を許さない。東京佼成ウインドオーケストラの名も世界的なホールマークへと発展した。そして、それまでのレコードやCDに代わって音楽配信サービスが主流となった21世紀の今日においても、1000曲を超える楽曲がiTunes等を通じて愉しめる。なんてすばらしいことなんだろうか!

特色あるシリーズの中から、いくつか取り上げると......。

秋山和慶ウィンド・シリーズ

東京佼成ウインドケストラの真価を問うベく、前面にシリーズ・タイトル「Tokyo Kosei Wind Orchestra」を押し出し、1979~1984年にまず8枚のLPレコードでリリース。1988年のCD化に際し、「アルフレッド・リード」「近現代」「邦人」「クラシカル」「ロシア」「アメリカ」の6つのテーマ別に再構成された。指揮は、秋山和慶。シリーズからは、アルフレッド・リードの『法華経からの三つの啓示』やロバート・ジェイガーの交響曲第2番『三法印』など、後世に語り継がれる録音が生み出された。

ゲストコンダクター・シリーズ

1981年にLPレコードでリリースされた「A.リード&東京佼成ウインドオーケストラ」を起点に、ロバート・ジェイガー、フレデリック・フェネル、アーノルド・ゲイブリエル、ドナルド・ハンスバーガー、ジェームズ・バーンズ、山下一史、齊藤一郎、藤田玄播、岩井直溥という、東京佼成ウインドオーケストラのコンサートやレコーディングに客演した指揮者および作編曲家による自作自演のシリーズ。セッションで収録されたリードやバーンズのオリジナル曲、また最晩年の岩井直溥による自作自演集は、他にはないKOSEIレーベルならではの魅力的アイテムだ。自作自演から33曲をピックアップした「アルフレッド・リード作品集プラス」というアイテムも見逃せない。

フェネルズ・ウインド・アンサンブル・シリーズ

それまでのシンフォニック・バンドとは一線を画した“ウィンド・アンサンブル”の理念を提唱して、1952年にイーストマン・ウィンド・アンサンブルを創設。世界的にリスペクトを集める東京佼成ウインドケストラ桂冠指揮者フレデリック・フェネル(1914~2004)が、イーストマン時代と違わぬ“ウィンド・アンサンブル”のコンセプトを前面に押し出したシリーズ。1984~1986年にLPレコードで8タイトルが制作され、1988年にCD化された。クリフトン・ウィリアムズの『ファンファーレとアレグロ』、H. オーウェン・リードの『メキシコの祭り』、ジョン・フィリップ・スーザの『海を越える握手』、パーシー・グレンジャーの『リンカーンシャーの花束』まで、“タイトル曲=フェネルの定番”であり、統一感のあるジャケット写真も人気を集めた。

フレデリック・フェネル・シリーズ

“ウィンド・アンサンブル・シリーズ”のコンセプトを拡げ、レパートリーをコンテンポラリーからクラシック編曲作にまで枠を拡げたフェネル指揮のシリーズ。1987年にリリースされたファースト・リリース「シンフォニック・ソング」の後、マエストロからつぎつぎと新しい提案が出され、ジョーゼフ・ホロヴィッツの『舞踏組曲』、フィリップ・スパークの『セレブレーション』という、東京佼成ウインドケストラがヨーロッパの作曲家に委嘱した作品のほか、ニコライ・ミャスコフスキーの『交響曲第19番』、伊藤康英がトランスクライブしたドミトリー・ショスタコーヴィチの『交響曲第5番』など、アメリカ時代のフェネルにはなかったレパートリーも登場。1997年リリースのヴァーツラフ・ネリベル作品集「復活のシンフォニア」は、とくに高い評価を得た。フェネル没後、ライヴなどの秘蔵音源から作られた2005年の「ブラボー、マエストロ!アンコール!」は、いつもコンサートを湧かせたアンコール集であり、収益の一部は、遺言により米カリフォルニア州にある“聴導犬支援基金”に寄付されている。

ヨーロピアン・ウィンド・サークルズ

1991~2009年に全7作がリリースされたこのシリーズは、“吹奏楽オリジナル=アメリカの作品”という、それまでの常識を覆し、その後のヨーロッパ作品ブームの火付け役となった。ヤン・デハーン、フィリップ・スパーク、ヤン・ヴァンデルロースト、ダグラス・ボストック、ベルト・アッぺルモントが指揮のために来日。ヴァンデルローストの交響詩『スパルタクス』や祝典序曲『オリンピカ』、スパークの『オリエント急行』や『祝典のための音楽』、アッぺルモントの交響詩『エグモント』、フランコ・チェザリーニの『アルプスの詩』、マーティン・エレビーの『パリのスケッチ』、アダム・ゴーブの『アウェイデー』など、シリーズ収録作から数多くのヒット作が生み出された。

邦人作品シリーズ

ウィンド・ミュージックの重要な柱のひとつである日本人作曲家の作品にスポットをあてたシリーズ。1990年にスタートし、小田野宏之、金洪才、岩城宏之、山下一史が指揮として登場し、その顔ぶれも毎回話題を呼んだ。兼田敏の『シンフォニック・バンドのためのパッサカリア』、真島俊夫の『三つのジャポニスム』や『三日月に架かるヤコブのはしご』、上岡洋一の行進曲『秋空に』、三善晃の吹奏楽のための『クロス・バイ・マーチ』、長生淳の『レミニサンス』、團 伊玖磨/時松敏康の『ブラス・オーケストラのための行列幻想』など、多くの人気作が愉しめる。岩城宏之指揮の黛敏郎管楽作品集「トーンプレロマス55」は、平成11年度文化庁芸術祭優秀賞に輝いた。

東京佼成ウインドケストラ以外にも、アンサンブルでは、ウィーン・トランペットコアー、東京トランペットコアー、ヴァルター・ブイケンス・クラリネット合奏団、オブロー・クラリネットアンサンブル、ミ・ベモル サクソフォンアンサンブル、ブリーズ・ブラス・バンド、ヴィヴィッド・ブラス・トーキョウ、ザ・テューバ・バンド、パ・ドゥ・シャ、ザ・トランペットコンサート、4 Bone Lines、ソロでは、アレン・ヴィズッティ、田中靖人、外囿祥一郎、宮村和宏、山本浩一郎という、多彩なアーティストがKOSEIレーベルとともに歩んでいる。

樋口幸弘

大阪市出身。音楽解説者、プロデューサーとして活躍。内外に幅広いネットワークを持ち、コンサートやレコーディング、講演を通じ、多くの現代作曲家、作品、アーティストを世に送り出した。音楽各誌に執筆、NHKをはじめ放送各局でコメンテーターとして活躍。1990年以降、ブリーズ・ブラス・バンドのミュージカル・スーパーバイザーをつとめ、ブラスバンド・ブームの先駆けをなす。東京佼成ウインドオーケストラをはじめとするプロの定期公演にプログラム・ノートを多数執筆。企画、制作、解説を担ったレコードやCDは、優に300タイトルを超す。絶えず時代の先を見据えたエネルギッシュな活動は、他の追従を許さない。